指板(しばん)とは、ネック(棹)の表面に貼られた木材などの板です。
ここに指を乗せて演奏するため、別名フィンガーボードとも言います。
またエレキギターにではほとんどの場合フレットという金属の棒が21本~24本(稀に27本など)が取り付けられている(まれにフレットレス(フレット無し))ことからフレットボードとも呼ばれます。
◎ポジションマーク
大抵の機種では指板表面には装飾的な意味合いを兼ねてフレットの位置を示す「ポジションマーク」が打たれています(付けられているという意味です)。
ポジションマークと言っても実際の演奏では指板表面のマークではなく指板の側面に打たれた小さなサイドポジションマークを見ながらフレットのポジションを探ります。
慣れてくればポジションマークを見なくても大体の位置はわかるようになりますが大きくフレット間を移動するフレーズなどでは無いと困るものです。
対して指板表面のポジションマークは演奏上は必要では無いのですがギターを飾っているときなど正面から見たときに有る無しやポジションマークの色、形、材質などによりそのギターの印象は大きく変わります。
●ポジションマークの形
小さな丸と四角いブロックタイプ(とその近親種)がオーソドックスな形ですが凝った形のもの、鳥や時計などメーカーの姿勢を現したもの、1つのポジションマークの中で複数の素材が使われているもの、指板全体のポジションマーク全部で1つの絵になっているものなど、感心するほど種類があります。
また外見の印象に大きく関わるためゴシック調のギターでは十字架型やアーティストの名前入りのものなどボディカラーやボディシェイプに劣らない存在感を醸している機種もあります。
自分の演奏よりも飾っているときに自分で見る、演奏時は聴く側が見て楽しむものといった方が良いかもしれません。
ただし演奏に全く関係しないわけではなく、ポジションマークのインレイ(はめ込み材)の大きさが大きいと指板上の木の面積が減りインレイの面積が大きくなりますので指板上の滑りが良くなります。
滑りが良い事は必ずしも演奏上良い事とは言えませんが、ジャンボフレットなど背の高いフレットほどその影響は少なくなり低いフレットは影響を強く受けます。
とは言え演奏上のメリットを考慮してポジションマークのインレイを打ち換えたりその面でギター自体を選ぶことは(人によってはあるかもしれませんが)あまりなされていません。
インレイを埋め換えるのは大仕事ですがインレイステッカーという商品があり気軽にインレイのスタイルを変更できます。
指板に貼るシールなのですが使ってみる前は指板とシールの段差があるのではないかと思いましたが全く気にならず、めくれる事もない強力なシールです。
勝手に剥がれることはありませんが意図的に剥がす際は剥がしやすく跡も残りません。
様々なデザインが商品化されあの憧れのインレイデザインもラインナップされているのでお勧めです。
●ポジションマークの素材
材質はプラスチック、パーロイド(真珠を模した人工材)、マザーオブパール(白蝶貝、真珠を生み出す種類の貝)やアヴァロン(アワビ)を削ったものなどがあります。
変わったところだとLEDの電飾で光るポジションマークがあります。
簡単に後から貼り付けるタイプのものと(当然電源は外付けなのでややスマートさに欠けます)指板を加工して内部から取り付けるタイプがあります。
サイドとトップのポジションマークが両方光るので暗闇で見やすいという利点もありますがリスナーに向けた演出的な側面の方が強いと思います。
常に点灯させるほか特定のパターンでの点灯や演奏に合わせて弦を押さえた箇所が光るなど多彩なパターンがあります。
気になる方は動画で検索して一度見てみてください。
素材による色の違いでもルックスが変わります。
高級感のあるギターに貝の蠱惑的な輝きをあしらったり黒っぽい指板にあえて黒いポジションインレイでよく見た時だけ見えたりとギターデザインの妙が冴える部分です。
◎指板の丸み
指板は平らに見えるものでも緩やかに1弦側から6弦側にカーブを描いています。
クラッシックギターなどは完全にフラットな指板のものがありますがエレキギターはまっ平らな機種はほぼ無く(少なくとも私は聞いたことがありません)ある程度のカーブが付いています。
このカーブの急さ、なだらかさを示すのに「R(アール)」という言葉が使われます。
アールとは半径のことでギターのスペックに「405R」などと表記されます。
この数字の半径の円の外周という意味で10cmの円の外周のカーブと10メートルのそれでは10センチの円の外周の方がカーブがきつくなります。
そのため数値が小さいほどカーブがきつく数値が大きければカーブは緩やかになります。
Rの前の数値はインチ表記とミリ表記があります。
多くのレスポールタイプはインチ表記だと12~16R/ミリ表記だと305R~400R
ストラトタイプはヴィンテージやそのレプリカが7.25R/180R
モダンモデルが9.5R/240R
となっています。
また上記の円筒形の指板のほかハイフレットでは緩いRからローフレットへだんだんきついRになだらかに変化する円錐形のコンパウンドラジアスという指板のタイプがあります。
手間のかかる作成方法の為ミドルクラス以上のギターに採用されています。
丸みのある指板は握りこむスタイルの演奏のために採用されたものですが現代音楽の演奏スタイルとはマッチしない場面もありオールドやヴィンテージのほかはその忠実なレプリカモデル以外での新規採用は皆無です。
ギブソンタイプのギターでは指板の側面にフレットに被せる様にバインディングと呼ばれる縁取りの装飾がなされた機種もあります。
バインディングは手間がかかる為そのギターが高級機種であるというアピールの為に施される面があります。
例えばレスポールのスタンダードモデルはボディの上面にバインディングがありますがカスタムモデルはボディ上下面両方にバインディングを施されています。
ボディの外周に施されている機種は飾りの意味と角の保護の役割がありますが指板側面のものは保護もありますが装飾的な意味と演奏上の理由があります。
木材のみのネック・指板の組み合わせに比べてバインディング有りの方が掌の滑りが良く横方向の運指に有利と感じる人もいます。
指板のバインディングはフレットの両端をカバーする形(オーバーフレット)で取り付けられいることがほとんどですが難易度の高い工程の為フレット交換をする際にはバインディングの上にフレットが打たれる形に変えられる事が多いです。
41.に続きます。
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