ギターには様々な役割を持つ部品が取り付けられています。
その中からペグを取り上げて解説していきたいと思います。
目次
◎役割
◎名称
◎種類
◎手入れ・注意点
◎役割
ギターのヘッド部分に取り付けられ弦を巻き上げて張力を調整し音程を変化させるパーツです。
弦楽器のほとんどに取り付けられており一番単純なものはヘッドの木材とペグ自体の木材の摩擦で位置を保持しています。
その役割通り「糸巻き」とよばれ「マシンヘッド」の別名もあります。
大抵のギターのヘッド部分に取り付けられていますがまれにボディ側にペグのあるギターもあります。
「ヘッドレス(ヘッドが無い)ギター」「ヘッドレス」と呼ばれるギターでスタインバーガー社製とライセンス生産品が有名です。
ヘッド側は弦を固定する役割にとどめボディ側に付けられたペグで調弦します。
このギターの特徴はネックの先にあるヘッドが無いため全長が短くまたその利点を活かしてボディも小さめに作られコンパクトギターとして人気を得ています。
一般的なミニギターは全長=スケールが短い為ピッチが不安定だったり弦のテンションが足りず一般的な弦が使用できなかったりするデメリットがありますがスタインバーガー社製はフルスケールであり音程に関する部分を犠牲にすることなくコンパクトさを実現しています。
また副次的な効果ですがペグ自体が重いとヘッド~ネックの弦振動を適度に抑制し低音がタイトになったりサステインが伸びる場合があります。
積極的にその効果を狙って販売されているヘッドに挟んで取り付ける錘状のパーツも存在します。
ただしこの効果はギター本体の作りによるところが大きいと思われどんなギターでもヘッド側を重くすればサステインが伸びるなどの効果が必ず表れる訳ではありません。
気になる方はいきなりパーツを買わずに100円ショップで金属製のクランプを買ってきて、布などを噛ませてヘッドに挟んで弾いてみてください。
これで効果が体感できる様であれば専用品の購入を検討しても良いと思います。
なおこの効果はヘッドへの取り付け位置を変えると効果が変わるそうなので(持ってはいますが突き詰めて効果を検証したことはないため)いろいろな位置で試してみられると良いと思います。
ペグが重いとギター全体が軽いギターでは「ヘッド落ち」と呼ばれる状態になります。
ボディ形状(ボディ形状やホーン(ネックの両脇のツノ)の位置など)やボディ材の重さ、各部パーツの重さなどが関係してきますがストラップで提げていて手を離すとヘッド側が下がる状態を言います。
こうなると演奏時に常に左手は弦を押さえる作業のほかにネックが下がるのを支えるのにも労力を割かねばならないため一般的には喜ばれない状態です。
これを解消する目的でエンドピン側に取り付ける砂袋のようなパーツが存在して、音質的な効果の為のヘッドに挟むパーツとは異なり重量バランスの為のみのパーツです。
ヘッド落ちが酷いギターは我慢して弾くか、ストラップを滑りにくいバックスキンのものにするなどの工夫がなされます。
◎名称
●ペグボタン
指でつまんで回すための部分です。ペグ全体の中では一番装飾的な意味合いを持たせやすいパーツです。
ペグ全体と同素材やプラスチック製が多いですが高級な木材のもの、プラ製でもパーロイドのような貝を模したもの、本物の貝から削り出した高級品も存在します。
試しに付けてみることが出来ませんので装着例の画像が探せれば装着後のある程度の予想は付きますが価格が高めな割りに賭けの要素があるリプレイスメントパーツです。
交換できない種類のペグもありますが交換できるものは作業も簡単ですしペグ自体の重さの調整できるメリットもあります。
また大きさや形状によって回しやすさも変わってきます。
ペグの種類によっては交換が難しいものもありますので対応機種をよく確認して購入してください。
●ペグポスト
弦を巻き付けるシャフト部分です。
ここが錆びたり傷が付いていると弦の寿命を縮めるだけでなく切れやすくなったり音程が狂いやすくなります。
弦が錆びてフレットやペグポストに錆が移る状態まで放置しないようにしましょう。
ここに巻く弦の量によってナットからポストまでの角度が変わるため積極的にテンション感の調節に利用する人もいます。
ただし基本的に巻く量は少なすぎても問題がありますが(ロック式ペグは除く)多すぎると演奏によるチューニングの狂いの原因になりますので巻き過ぎはデメリットが多いと思います。
内部のウォームギアなどのパーツもありますが通常意識すべきパーツと名称はこの2つを押さえておけば十分だと思います。
◎種類
●ロトマチックタイプ(グローバータイプ)
ギアカバーとペグボタンがワッシャーを介してぴったりとくっついていて埃や汚れに強いペグです。
頑丈で耐久性があり重量が重い傾向があります。
精度は良いですが重さで敬遠する人もいます。
ペグボタンがネジ止めされておりこのネジは本来の役割ではないのですがトルク調整をすることが出来ます。
またこのネジを外すことによってペグボタンを簡単に交換できます。
前述の通り操作性の向上、重量調整、装飾的効果が狙えます。
ブッシュ(軸受け)がナット留めになっていて弛みやすいので弦交換のタイミングで増し締めします(弦交換時以外でも気を付ければできます)。
ただしブッシュのナットは絶対に締め過ぎないでください。
弛まなければ良いですし多少弛んでいても重大な損害にはなりません。
むしろ強く締め過ぎることによってヘッド突板(化粧板)の損傷、ペグ自体の破損につながります。
ペグは破損すると
●中古があまりない(新品で購入せざるを得ない)
●精度が重要なパーツだが精度が高いものは値段も高い
とけっこうめんどくさいので破損させないようにしましょう。
またヘッド裏の取り付け部は大抵の場合小ネジ1本で取り付けられています。
後述のクルーソンタイプから主に精度の向上を狙い交換されることが多いですがヘッド裏のネジ穴の位置が違うため余分な穴が開いている中古ギターをよく見ます。
●クルーソンタイプ
ケースで囲われたギアボックスからシャフトが伸びてペグボタンが先に付いているペグです。
ロトマチックタイプと比べるとペグ1個を持って比べてもわかるほど重量が軽く軽快な音質のギターにマッチします。
またそのような音の方向性を狙いクルーソンに交換する場合もあります。
ブッシュは打ち込み式となっていて交換作業などで外す場合は慎重な作業が求められます。
ある程度の工具が無いと厳しいと思います。
多くのものが裏側から2本の小ネジで留められていますが3つのペグが連結した形式のものもあります。
●ロックタイプ
弦をロックして狂いを無くす目的で開発されたペグです。
FRTとは違いますので注意してください。
ペグポスト部分に弦をロックする機構があり弦をポストにほとんど巻き付ける事なく弦を保持できる仕組みです。
メリットは
●ポスト部分での弦の弛み(調弦の狂い)を回避できる
●巻く時間をカットできるため弦交換が早い
●なので弦交換が楽
●ポストへの巻き数が一定な為テンション感のバラツキがなくなる
特に弦交換の楽さは通常ペグに戻れない程だという声を良く耳にします。
デメリットとしては
●値段が高い
●機構が複雑なので重い
●機構が複雑なので他のペグに比べるとやや故障が多い
●見た目がゴツイ(ビンテージ風ギターには違和感がある)
●弦ごとに巻き数を変えるなどテンション感を積極的に調整する事が出来ない
重いなどの点は人によっては全くデメリットではありませんので値段と見た目が主な欠点といえますので値段をいとわない人、ルックスがむしろ好みである人にとってはほとんどデメリットはありません。
最後の項目に関してはポストの長さを調節できる機能を付けることで上記の要望に応えた商品もあります。
●オートチューニングペグ
ペグの裏側が6つ全てボックスでつながっており内部にモーターとバッテ.
リーを内蔵した自動チューニング機能のついたペグです。
クリップチューナーの様に弦振動で音程を感知しモーターとギアで手を触れずにペグが回り一瞬でチューニングが完成します。
オープンチューニングやオリジナルチューニングにも対応し値段さえいとわなければ最強のチューニングマシンといえます。
機構の複雑さも最高度で動作が不安定になったり電源が落ちるなどの故障品をたまに中古で見ます。
信頼性から言えばまだ発展途上なのかもしれません。
登場時はギブソン製品に取り付けられて販売されていましたがペグシステム単体でも購入することが出来ます。
◎手入れ・注意点
クルーソンタイプは古くなると内部グリスの粘度の変化で回しにくくなります。
グローバー(ロトマチック)は実質メンテナンスフリーのようなものですが心配であればごくたまに注油するくらいで良いと思います。
グローバーは注油よりも他の項目でも書きましたが各部のネジやナットをしめ過ぎない事が注意点となります。
グローバーのブッシュは締め過ぎるとペグばかりかヘッドの損傷につながりますしペグボタンのトルク調整ネジはペグボタンがプラ製の場合は割れてペグが回せなくなります(ペグボタンだけが空回りします)。
頑丈だというイメージ(実際頑丈ですが)と調整個所の多さから故障や破損を自ら招いてしまう事もあります。
また頻繁には起きませんが機械式の機構なのでやはり摩耗などの要因による故障や部品の劣化はどうしても起こります。
ギアが摩耗するとガタがでるようになりチューニングが不安定になります。
余程のビンテージでもなければ交換するのが一般的な対処法だと思います。
ほぼ見た目が同じグローバータイプでもネジ位置が違う製品がありますので互換性をよくよく確認して購入してください。
◎最後に
ペグは見た目やイメージ通りチューニングの精度に大きな影響のあるパーツです。
交換してみて精度の高さや操作性の満足度に気が付くパーツですが資金に余裕が高精度なものへの交換を検討されてみてはいかがでしょうか。
完
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