32.◎エレキギター ~塗装、ポリエステル・ポリウレタン

ギターの塗装に大変よく使われるのがポリ塗装と呼ばれるものですが、よく調べると

・ポリエステル

・ポリウレタン

と違う名前が出てきます。

一般的には高級機=ラッカー塗装(仕上げ)、入門機=ポリ塗装(仕上げ)と解釈している場合も多く見られこの2種類のポリ塗装には触れていない記述も多く目にします。

今回はこの2つの違い、手入れや保管の注意点をお話ししたいと思います。

目次

◎ポリ系塗装の総合的な特徴~ポリウレタンは上級機種にも~

◎ポリエステルの特徴

◎ポリウレタンの特徴

◎取り扱いの注意点~基本的にはメンテフリー、熱には注意~

◎ポリ系塗装の総合的な特徴~ポリウレタンは上級機種にも~

●塗膜が厚い、硬い

●湿度や温度に強い

●製造時の作業効率が良いということが挙げられます。

●塗膜が厚い、硬い

塗膜が時間をかけて硬貨していくラッカーに比べ完成時にすでに最高硬度になります。

摩擦や汚れにも強くメンテナンスが楽です。

硬度が高いが故に脆いため衝撃に弱く、スポットで物がぶつかるとガラスの弾痕の様な割れ方をしたり塗膜が剥がれたりします。

この様な特徴はラッカー塗装には見られません。

また脆いが故に経年で内部にたくさんの小さな剥離が起こる内部剥離が起こると言われています。

●湿度や温度に強い

塗膜が樹脂の膜であるため湿度や温度の影響を受けにくい特徴があります。

ラッカー塗装の様に気温が高い時に塗膜が軟化したり手の汗を吸って塗面が荒れたりする事はありません。

●製造時の作業効率が良い

安価なギターに使われる理由がこれです。

乾燥が早くて気泡などが出にくく、蒸発しないので塗装の痩せもありません。

これらがラッカー塗装に比べての共通の特徴です。

つぎにポリエステルとポリウレタンそれぞれの特徴を見ていきます。

◎ポリエステル(Polyester)塗装の特徴

2つのポリ系塗装の中でも特にポリ系の特徴が強く出る塗装です。

塗装後の乾燥時間が特に短い上、粘度が高い為木材に吸収されにくいので短時間で簡単に厚い塗膜が得られます。

短時間で硬化する為気泡等が出にくい事も熟練工を必要としないという製造上の利点となります。

完成した塗膜はプラスチックと同程度の硬度となり爪で押したくらいでは傷が付きません。

ラッカー塗装ではボディも気持ちもてきめんにへこみます。

しかしその分塗膜は厚くなりギターのボディ鳴りの面では不利であるとされます。

ぶつけたときに茹で卵の殻の様に塗膜がバリバリ剥がれるのはこちらのポリエステル塗装です。

装飾という点でもプリントした絵柄や木目などを下地にして透過させたものもあります。

これを利用してネックにトラ目をプリントしたギターもありますが後年剥がれが酷くなっているものを見かけます。

ポリウレタンに比べてですが輝きが劣り僅かですがやや鈍い光沢になります。

◎ポリウレタン(Polyurethane)塗装の特徴

塗装の乾燥時間はラッカーに比べると短いのですがポリエステルに比べると長く厚塗りができません。

厚塗りが出来ない分、重ね吹きによる薄吹きが出来ますのでラッカーほどではないですが薄い塗膜を形成する事も可能で特に近年は技術の進歩によりさらに薄い塗膜になっているようです。

また摩耗や気温・湿度に強いのですがラッカーの様に塗膜にやや柔軟性があります。

欠点としては上記理由により作業時間が長くなり製造コストが上がることです。

その分作業効率も幾分劣るため比較的上位機種に採用されています。

また自然光・人工光ともに酸化反応し黄変する場合があることです。

全体に変化すると気づきませんがパネルを外したり貼っていたシールを剥がしたりすると変色に気づきます。

塗膜が強く摩耗性が高い為鏡面仕上げの研き作業が困難であることも製造コストの上昇の原因となっています。

しかしラッカーと比べれば硬質で硬化速度も速く、作業効率は良いとされています。

ポリウレタン塗装は、特徴的にポリエステルとラッカーの中間に位置すると言えます。

塗膜の薄さからラッカーとほとんど変わらないと主張する人もいてラッカーの鳴りとポリの手入れの手軽さから多くの上位機種に採用されています。

◎取り扱いの注意点~基本的にはメンテフリー、熱には注意~

特徴の中で述べましたように塗膜は強靭で非常に安定しており汚れと軽微な擦過には過敏になる必要はないでしょう。

普段はクロスによる乾拭き、汚れが気になる時のみクリーナーやポリッシュを使用するくらいで十分です。

注意点としては以下になります。

●焼け・黄変する

自然光・人工光ともに紫外線焼けが発生します。

塗料に紫外線防止措置が取られているかはスペックからはわかりませんので市販の紫外線プロテクト機能付きワックスを使用するのが手軽でほぼ唯一の予防手段でしょう。

ケースに入れて保管するのがお金はかかりませんが出して弾いていれば照明の影響を無くすことは出来ないでしょう。

日光はともかく室内照明でも焼けるので白いボディは黄色く変色します。

塗料に紫外線防止措置を取らないのはビンテージの様な経年変化を喜ぶ層へ向けてのアプローチかもしれません。

●熱に弱い

気温には強いと書きましたが高熱には非常に弱いです。

ラッカーの高級機では行いませんが安価なギターに貼ってあったシールを剥がそうとしてドライヤーを当てたところ、塗膜が形を保ったまま軟化しボディと塗膜の間に気泡が入ったかの様な状態になりドーム状に丸く伸びた塗膜は元に戻りませんでした。

シールの糊を軟化させる目的だったのですが安価なギターは丈夫と高をくくって舐めすぎました。

◎最後に

ラッカー塗装は美しく経年変化を楽しめますが、特にポリウレタン塗装の手入れの手軽さやなにより普段の扱いへのストレスが無い点は非常に高い利点であると考えます。

塗装法を基準にギターを選ぶことは少なくとも私には無く気に入ったギターを所有できれば良いと考えています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました