ギターの見聞が広がって来ると、指板の保湿というメンテナンスの項目が目についてきます。
少し調べると「レモンオイル」や「オレンジオイル」が良いという意見とそれらは使わない方が良いと言う意見が混在しています。
老舗メーカーのマーチンはレモンオイルは推奨してないと言います。
どちらが正しいのか情報が錯綜してます。このあたりの見解を述べていきたいと思います。
そもそも指板には手の脂が付くのでオイルは不要とする意見もあるのですが、これは塗らなくてもそうそう問題は無いと言う事だと思います。
しかし、特に堅い指板材のエボニー等で、木材の乾燥と収縮で指板が割れる事があります。
指板は1本の木材な為ほとんど縦方向に木目がありますので、縦方向にクラックが入っている個体をたまに見ます。
私所有のエボニー指板のギターも購入時は割れていて、オイルを塗布したところ膨張してクラックが埋まりました。
導管の多いローズウッドやメイプルでは割れた個体は少ないですが、塗装仕上のメイプル以外はオイルでのケアはした方が良いと考えています。
そして本題の保湿と言う観点からの指板へのオイル塗布の是非ですが「オイル」ならば効果あり、と考えています。
もう少し詳しく申し上げますと、レモンオイルやオレンジオイルは純粋なものであれば「リモネン」というエッシェンシャルオイルと呼ばれる成分であり、日本語でも「精油」と訳される為ややこしいのですが、これはいわゆる「オイル(油)」ではありません。
なので純粋なレモンオイル、オレンジオイルは保湿にはなり得ません。
なのになぜ勧められる場合があるのかと言うと、ギター用品の「レモンオイル、オレンジオイル」と銘打って売られている商品には、純粋なレモンオイル、オレンジオイルの物は無いからです。
ほとんどは油分等保湿メンテナンス用途に用いやすい様、なんらかの成分が加えられています。
中には第2石油類に分類されるものもありラッカー塗装仕上のギターの塗膜やゴム製品を確実に痛めます。
そのレモンオイルを代理販売してるメーカーは自社製品ギターではラッカー塗装仕上のギターは販売していない為、自社のレモンオイルを自社ギターのみに使用する分には問題無いと考えているのかもしれません。
巷で言われるレモンオイルと、本来のレモンオイルが違うと言う事を、大切なギターの塗膜を痛めて後悔するユーザーが出ない様に、明記する必要があると思います。概ねラッカー仕上のギターは高額ですから。
◎レモンオイルが良いかの答え
冒頭で述べたようにレモン(オレンジ)オイルが良い悪いと両極端な意見がある原因は
「商品として売られているレモン(オレンジ)オイルの中身が商品によって違い、本来の(純粋な)レモン(オレンジ)オイルとも違うから」
というのが私が調べて達した答えです。
そして使ってよいか/使った方が良いかの答えは
「成分を良く調べたうえで塗装の種類とも合わせて商品を選ぶことが必須」
であると考えます。
保湿と言う観点ではなんのオイルでも良いと言う意見もありオリーブオイル等でも良いと言う意見もあるのですが、乾かずにいつまでも柔らかいと言う記述を見た事がある為試してはいませんが使用する気になれません。
私は長年「エゴマオイル」を使用しています(食用としてスーパーで売られているものではありません)。
そしてどのオイルを使う場合でも
①頻繁に塗り過ぎない(乾燥季に年1回)
②オイルを馴染ませて汚れを落とした後はしっかりと拭き取る
これらをしっかり行うと良いと思います。
レモンオイルは用いる場合はラッカー塗装には気をつけて汚れ落としに用い、指板の保湿には本来の油分のある「オイル」を使用した方が良いと思います。
完
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