34.◎エレキギター初級 ~ナットの重要性

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当ブログでギターパーツの解説をしようと思ったときに真っ先に浮かんだのはナットでした。

ナットは重要で精密なパーツでありそれを知った時は大変驚きました。

今回はナットの重要性をお話していきたいと思います。

目次
◎ナットとは
◎ナットの役割
◎ナットの保守管理

ギター 指板

◎ナットとは

ヘッドとネックの間にある、弦の支点となるパーツです。ボディ側の支点がブリッジのサドルです。

ブリッジサドルからヘッドに向かって弦が張られナットが枕の様に弦を支えてペグに巻かれます。

白や黒のプラスチックのものや金属のものが目にしやすいですが、実際には牛骨、人工象牙、人工大理石、カーボン、真鍮など様々な素材が使われており、音や特性にそれぞれ特徴があります。

また弦溝の部分にベアリングを使用して摩擦を減らした金属製の「ローラーナット」や、弦を固定してしまうフロイドローズ(FRT)などのロック式ナットもあります。

なぜ滑るようにベアリングを使用したものと滑らないように固定したロック式という相反する仕組みのものがあるのでしょうか。

それはナットの役割を見ることでわかります。

●チューニングが狂う仕組み

ナットの役割を見る前に基礎知識としてチューニングがなぜ狂うのかを説明します。

チューニングが弾いているうちに狂ってしまう原因は弦が古くて伸びていたりブリッジの動作が安定していないなどの要因もありますが、ナットの状態もその理由の一つです。

チョーキングやアーミングによって弦が引っ張られるのは容易にご想像が付くと思いますが厳密には通常の演奏でも弦がブリッジとナット(または押弦フレット)の間で弦が大縄跳びの様に振られて振動してる時に僅かですが両支点から中央に引っ張られる形になります。

また押弦行為自体が弦を引っ張る行為に他なりません。

この時ペグポストに巻かれた弦が弛んだり引っ張られたりし、ブリッジコマの上を弦が行き来し、そしてナット上も弦が滑り、動きます。

その時ナットの滑りが悪かったりして弦の動きが適切でないと引っ張られたり伸びたりした弦が適正値に戻らず調弦が狂ってしまいます。

これに対して適切に滑らせ弦を元に戻りやすくするのが通常のナット、逆に全く滑らないように固定して狂う要因の1つを無くすという観点で考案されたのがロック式ナットです。

「ロック式」という名称から混同されやすいですがロックナットを含むロック式ブリッジ(FRT)とロックペグはナット上の弦の動きという点で違うものです。

◎ナットの役割  

上記の様にチューニングの安定にはナット弦溝の滑りやすさが必要ですがナットには他にも重要な役割がたくさんあります。

●弦を固定する

ナットが影響するのは開放弦を奏でるときのみだと感じられるかもしれませんが押弦時の安定した音程はナットでのしっかりした固定が必要です。

滑れば良いと言わんばかりに弦溝が弦に対して深すぎたり幅が広すぎたりするのもよろしくありません。

深すぎる場合弦の自由な動きが妨げられますし幅が広すぎれば弦の動きが安定しません。

逆に浅かったり狭すぎたりすぎれば弦振動やチョーキングどころかカッティングでも弦が溝から外れてしまいます。

●弦の高さを決める

ナットの高さ、弦溝の下端はヘッド側の弦高を決定しています。

この高さはローフレット(低音域側、1~4フレットくらい)の音程に影響します。

高すぎると押弦時に指板側に引かれる量が増えて音程がシャープします。

新品の弦でチューニング完了後、1フレットを押さえてチューナーを見たときにFより高い音程であればナットが高い可能性があります。

また押弦時の高さと開放弦の弦高に差が出すぎるためオープンコード(開放弦を含むコード。ローコードのCやGなど)が非常に押さえづらく押弦した指が開放弦に触れやすくなり演奏性が下がります。

逆に低すぎると押弦はしやすくなりますがローフレット側の押弦時にビレが出やすくなり、極端に低い場合は音詰まりを起こします。

例外としてローフレットでの演奏をほとんどしないプレイヤーの好みでハイフレット(高音域側)の演奏性の為にローフレットの出音を敢えて犠牲にしたセッティングがなされることがあります。

●弦と弦の間隔を決める

ナットに刻まれた弦溝により弦同士の間隔が決定され演奏性に影響を及ぼします。

この間隔は「弦間」「弦ピッチ」とも呼ばれ基本的にはナット側よりブリッジ側が広くなっています。

ナット自体の幅はイコールネックの幅であり、試しに楽器店などで触るとわかりますがほんの数ミリネック幅が違うだけで演奏性はかなり変わります。

何ミリが良いかは人それぞれとしか答えようがなく、弦間が狭いと指の太い人は隣の弦に触れやすくなりストレスになりますが手の小さい人にとっては広い弦間は押さえにくさによるストレッサーになるでしょう。

お住まいの地域によってご事情はあると思いますができる限り実際に触ってから購入することをお勧めします。

近所のリサイクルショップに1本だけギターが置いてあるなどという場合でもそれを購入しなくてもよいので触って弾いたりしてみましょう。

ただしリサイクルショップなどギターの試奏が当たり前でなかったりしますのでご注意ください。

※かなり昔ですが試奏を願い出たら「購入するなら弾いてもよい」と返答されたことがあります。

ネックが狭い、細い、小さい事(そして薄い)は弾きやすさとイコールでは決して無いため「自分は手が小さいからミニギターを買おう」などと思わず本当に標準的なギターにするべきだと私は考えています。

ご病気などで極端に手の小さい方でなければ標準的な寸法のギターは必ず慣れます。

テクニカル系のプロギタリストでも手が小さい人はたくさんいます。

ネック幅=ナット幅なわけですがナットの中に等間隔に弦溝が切ってあります。

その等間隔の弦間のは2つあり弦の中心同士を比べての等間隔か、弦と弦の間が等間隔かです。

弦は太さが違いますので後者のほうが見た目は等間隔に見えますがこれもどちらが正解ではなく好みや演奏スタイルによるところがあります。

●その他

上記の様に弦を保持する役割と演奏性や音程は密接に関係していますがナットの不良があると以下のような症状が出ます。 

・チューニングが不安定/狂いやすい、調弦しにくい

滑りが悪いとペグを回しても音程が変わらず「ピキッ」という音がして一気に音程が変わったりします。

ペグが原因の場合もゼロではありませんがナットが原因の場合がほとんどだと思います。

弦を変えておらず錆びたりして滑りが悪い場合は論外です。

溝を削ってしまいナットの寿命を削るという観点からも弦は錆びる前に換えましょう。

演奏中にも調弦が狂う事は前述のとおりです。

・異音が出る/ビリ付く

一概には言えませんがナットの弦溝が広すぎて溝内で弦が暴れる場合に発生することがあります。

・弦同士で音にバラ付きがある

これも弦溝の状態が各弦でバラ付きがある場合に発生することがあります。

またナット自体の取り付けが適切出ない場合は弦振動がネックに効率良く伝導せずサステインが短くなるなどの状態になります。

これらの状態不良は溝の幅や深さだけではなく溝の形状も重要です。

指板側のナットのエッジが弦に当たっている、溝内の上面が適切にスラントしている事が重要です。

◎ナットの保守管理

お話ししてきましたようにナットは弦の圧力や摺動に常にさらされている為基本的には消耗品です。

日頃の手入れとしては弦溝を弦交換のタイミングで清掃する事です。

また弦溝にグリスアップするのも良いですがプラスチックを侵すものがありますのでグリスの種類には気を付けてください。

様々な素材のナットと金属である弦のように異素材の摺動で浸食の心配がないのでシリコングリスが良いと思います。

心配な方はギターパーツメーカーから専用のグリスが販売されていますのでそちらを使用するのが間違いはないかと思います。

最も安価で有名なものとしては鉛筆の芯を溝に刷り込むことです。

黒く汚れたようになるので私は実行したことはありませんが古くから(私が知る限りでも30年以上前)推奨されている方法ですので問題はないかと思います。

弦溝は各弦の幅に合わせて切られている以上、弦の標準的なゲージ(太さ)を変更した場合は厳密にはナットの調整が必要になります。

標準的なゲージはストラトキャスタータイプやテレキャスタータイプなどフルスケールのものは09~42のスーパーライトゲージ、レスポール系のミディアムスケールは10~46のライトゲージです。

これを張らなければならないという決まりではないですが、自分で弦を交換するために購入する際は最初は同じゲージを張ることをお勧めします。

◎最後に

以上見てきましたようにナットは極めて重要かつ高精度が求められるパーツです。

チューニングが狂いやすい、チューニングがしにくい(特に急に音程が変わる場合)、演奏時の音程が狂いやすい(特にアーミングやチョーキング時)場合はナットの不良を疑いできればプロに見てもらうことをお勧めします。

エントリークラスのギターであればナットに特殊な素材を使用している事はほとんどないためシリコングリスの塗布はお勧めできます。

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